手でさえぎって支払拒否の態度を示す男性

風俗嬢との性交渉中に盗撮したことが風俗にばれた時、「次からは気をつけてくださいね」で帰されることはまずありません。

ほとんどの場合、お店から免許証など身分証明書のコピーを取られて身元を押さえられ、お店や女性から「慰謝料」「損害賠償」といった名目でお金を払うよう請求されます。

しかし、結論から言いますと、風俗から請求される慰謝料や損害賠償の多くは実は支払い義務がありません。そして女性に対しては慰謝料の支払い義務があるものの、その額は非常に低額です。

それではなぜ、風俗に対しては盗撮の賠償義務がないのか、そして、女性に対しても低額な慰謝料の支払で済むのでしょうか。

損害賠償や慰謝料の支払義務について

風俗や女性が損害賠償や慰謝料を請求する根拠となる法律は、民法709条と710条となります。

(引用)民法709条:故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法710条:他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

簡単に言えば、709条は、「わざと又はミスで人に損害を与えたらその損害を補填しなくてはなりませんよ」という意味で、710条は、「709条で損害補填の責任が生じた人は、その損害を与えてしまった人の心の傷の補填もしなくてはなりませんよ」という意味になります。710条はいわゆる「慰謝料」というものです。

そしてここで重要なのは、賠償が法的に認められるためには、「実際に損害が生じていること」「行為と損害の間に相当因果関係が認められること」「損害が生じたことや、具体的な損害額、因果関係を被害者が立証すること」が必要となります。なお、相当因果関係の「相当」とは、社会一般的に認められるという意味です。

ここで、風俗と風俗嬢に対する賠償責任を分けて考えてみましょう。

風俗店に対する賠償責任の有無

さてここで、風俗で盗撮が発覚した時に店が好んで使う常套文句を見てみましょう。

『女の子が盗撮されたショックで店を辞めたいと言っている。この子は1日だいたい3万円稼いでいて、週に4日勤務だから、月換算すると約50万円。どうしてくれるの?これ。店の損害と女の子の損害で合わせて100万円払ってもらうから』

突っ込みどころが満載ですが、一つずつ噛み砕いて考えてみましょう。

まず、「女の子が盗撮されたショックで店を辞めたいと言っている」の箇所ですが、あくまでも、店を辞めたいと言っているに過ぎません。実際に辞めたわけではないので、賠償責任が認められる要件である、「実際に損害が生じていること」を満たしていません。

では、仮に女の子が本当に店を辞めたとします。しかし、盗撮されたことで女の子が店を辞めるのは社会一般的にみて因果関係(原因と結果の関係)があるとは言えません。なぜなら、風俗での盗撮画像がネットにでも流出したのならまだしも、盗撮が発覚し画像は消去されているはずです。

風俗嬢は全裸でお客と接し、身体のありとあらゆる箇所をお客に見せる職業なわけですから、「裸を撮られた」からといってそれだけで羞恥心が沸くものではありません。
よって、「行為と損害の間に相当因果関係が認められること」の要件も満たしておりません。

そして、「この子は1日だいたい3万円稼いでいて、週に4日勤務だから、月換算すると約50万円。」ですが、店側が一方的に告げているだけで、本当にその女性がそれだけの売上があるのか、給与明細等を提示して証明しなくてはなりませんが、それもやっていません。また、100万円という額の根拠もありません。よって、「損害が生じたことや、具体的な損害額、因果関係を被害者が立証すること」の要件も満たしておりません。

さらに言えば、なぜ女の子の損害賠償まで店が勝手に請求しているのかすらわかりません。

これらの点から、風俗店に対しては一切の賠償責任は生じません。

風俗嬢に対する賠償責任の有無

風俗の客に盗撮されたことがショックで店を辞めた。辞める。といった主張に関しては、風俗のケースと同じ理由から賠償責任は負いません。では、いわゆる「慰謝料についてはどうでしょうか」。

たしかに、風俗嬢は全裸でお客にサービスを行う職業ですので、自分の裸や性行為を撮影されただけで羞恥心を害されたと主張するのは無理があります。

しかし、「もし、お客から盗撮されていることを発見できなかったらどうなっていただろう」という恐怖心は生まれるはずです。

昨今の、風俗での盗撮動画のネット上での流出や拡散の現実を考えれば、もし隠し撮りしていることに気付かなかったら、自分の裸や性行為、そして風俗勤務が世間に知られていたのではないかと思うでしょう。

こういった女性が感じた恐怖心に対しては、心の傷の補填として慰謝料の支払義務が生じることとなります。また、これにより精神科や心療内科に通院した場合にはその通院費も一定限度の範囲で支払わなくてはなりません。

なお、損害賠償請求権の発生時期は、損害が生じた時となります。つまり、盗撮がばれた時に、風俗嬢のお客に対する損害賠償請求権が発生してます。
そして、不法行為による損害賠償請求権の遅延利息は、損害が生じた時から発生するというのが判例の立場です。

遅延利息は、取り決めのない場合は年5パーセント(法定利息といいます)とされてますので、風俗嬢への損害賠償や慰謝料の支払を放置すると利息が生じることは頭に入れておきましょう。

風俗嬢へ払う慰謝料や損害賠償の相場

では、風俗嬢に支払う慰謝料や損害賠償の相場はいくらくらいが妥当なのでしょうか?

後で自分だけで見て愉しむ目的で盗撮を行った場合

風俗での盗撮で最も多いのが単なる「自分で一人で楽しむためについ出来心で撮影してしまったケース」です。

自分で楽しんで終わりでそれ以外に流出させていない場合には、慰謝料や損害賠償の相場は5万円〜10万円前後となります。

この内訳としては、風俗嬢が盗撮によって精神的なショックを受けたときの慰謝料や、精神的なショックが原因で心療内科等の病院に通院した時の通院費などになります。

風俗嬢が精神科に通い続けたら10万円以内では収まらないのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、損害額を決めるにあたっても、前述の相当因果関係が適用されますので、あくまでも盗撮行為から社会一般的にみて生じるであろう損害のみ、加害者であるお客は支払えば良いことになります。

よって、10万円を越えるような高額な請求されたとしても訴訟の場においては認められません。

盗撮画像をネットなどに流出させた場合

中には盗撮した画像をネットに流出する人もいますが、この場合は単に盗撮した場合に比べて慰謝料や損害賠償金の相場ははね上がります。

ネットなど不特定多数が見ることができるところに女性が性行為をしている映像などを流出するのは、女性のプライバシーや肖像権の侵害にあたります。そのため、数百万円という損害賠償金が妥当だと判断されるケースも。また、名誉棄損罪(刑法230条)に該当して民事責任を負うだけでは済まないこともありますので絶対にやめましょう。

風俗での盗撮の慰謝料相場はなぜ低いのか

風俗で盗撮がばれた時の損害賠償や慰謝料の相場は5万円〜10万円と言われますが、街中で女性のスカートの中の下着を隠し撮りしたり、更衣室やトイレに隠しカメラを設置するなどの一般的な盗撮による慰謝料の相場は、10万円〜90万円程度と言われています。なぜこんなにも違いが出るのでしょうか?

これは、風俗での盗撮と、一般的な盗撮とで2つの大きな違いがあるからに他なりません。以下理由を述べます。

犯罪に該当するか否かの違い

一般的な盗撮とは、街を歩いている女性の後をつけて下着を盗撮したり、住居区域に侵入して浴室を覗いて盗撮したりなど、建造物侵入罪や迷惑防止条例、軽犯罪法に該当する犯罪です。

参考:風俗での盗撮は犯罪になる?警察に逮捕された実例を交えて解説!

一方風俗での盗撮は条例や法律で定められている要件を満たさず、逮捕される可能性がほとんどありません。

通常、一般的な盗撮のケースでは、逮捕されて起訴されるまでの間に加害者側の弁護士が被害者と示談を結ぼうと奔走します。

理由としては、一般的な盗撮のケースでは、被害者とかわす示談書の中に宥恕条項(被害者が加害者を許すこと)と同時に被害届を取り下げることを書くのが通常です。
これにより、盗撮のような犯罪の場合には不起訴になることがほとんどだからです。

被害者は、盗撮した者が起訴されて裁判にかけられるか否かの実権を握っているわけですから、それなりに高額な慰謝料を提示しないと示談に応じないのです。

それに対し、風俗での盗撮行為は犯罪として逮捕される可能性が極めて低いので、わざわざ高額な慰謝料を支払ってまで示談する必要がないのです。

風俗嬢と一般人女性との違い

これは前述しましたが、風俗嬢は男性に裸でサービスする仕事ですので、一々男性に対して下着姿や裸体を見られることを恥じていては仕事になりません。ですので、それを盗撮されたことによるショックの度合いも一般人よりはかなり低下すると考えられます。

一般人女性は、街中で見知らぬ人に下着を見られたり、更衣室や脱衣場で裸を見られたり、トイレで排泄の模様を見られることなど一切想定していません。その中で、自分の恥ずかしい姿を見られたと知った時の精神的動揺や驚愕の度合い、羞恥心を害される程度も、風俗嬢のそれとは比にならないことでしょう。

このような理由から、一般的な盗撮のケースと比べ、風俗嬢への慰謝料は低額になるのです。

利用規約の「違約金」の表記を盾に損害賠償してくる例外的ケース

これまで、風俗に対する損害賠償責任を負うことはないと解説してきました。その理由としては、不法行為による損害賠償請求(709条)の要件を満たしていないことであることも説明しました。

店側としては何とかしてお客からお金をせしめたいところですが、われわれ弁護士が介入し、709条の要件を満たさないので店には賠償金を支払わない旨伝えると大抵はおとなしくなります。

しかし、稀にですが、予想外の手法で賠償責任を主張してくる風俗も存在します。

その手法とは、「損害賠償額の予定」による要求です。

損害賠償額の予定とは

(引用)民法420条
1項 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
3項 違約金は、賠償額の予定と推定する。

風俗のホームページや、店舗型風俗の場合は受付側の張り紙などに必ずといっていいほど「利用規約」があります。

そしてその利用規約に、「本番行為の強要や盗撮が発覚した場合は、違約金として100万円いただきます」と記載してあることがあります。

この違約金ですが、民法420条3項に、「違約金は、賠償額の予定と推定する」と規定されています。

そして、民法420条1項を見てください。

「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。裁判所は、その額を増減することができない。」

つまり、420条の1項と3項をもう少し簡単に説明すると、「債務不履行があった時に備えて、損害賠償の額を先に決めておくことができて、しかも、その額については裁判で争っても変更できません。ちなみに、違約金という言葉は、損害賠償額の予定という言葉と同じ意味としますよ。」ということになります。

これを、風俗での盗撮トラブルにあてはめて、より具体的に説明します。

無店舗型の風俗にせよ、店舗型のヘルスやソープにせよ、お客と店との間には契約関係が成立しています。

契約関係が成立しているということは、お互いに債権と債務を持った関係ということになります。

お店側は、お客に対して女性をあてがい、性的なサービスを受けさせる債務を負っているのと同時に、お客に利用規約に従ってもらいことと、料金を支払ってもらう債権を持っています。
逆にお客は、利用規約に従うことと、料金を支払う債務を負っているのと同時に、お店に女性をあてがってもらって性的サービスを受ける債権を有してます。

このように、お客は利用規約に従う債務があり、お店は、お客に利用規約に従ってもらう債権を有しています。

とすれば、利用規約に違反する盗撮行為をお客が行ったことは、債務不履行になります。

つまり、お客が盗撮したことで債務不履行が生じたので、違約金(損害賠償額の予定)を支払わなくてはならないし、違約金の額も裁判で争ったところで変更できないということになります。

不法行為による損害賠償請求との違い

前述のように、不法行為による損害賠償請求(709条)のケースでは、風俗は、損害の発生から損害の範囲、加害行為と損害との間の相当因果関係を全て立証しない限り、お客に損害賠償請求が認められないと説明しました。

それに対し、損害賠償額の予定(420条)では、債務不履行が発生したことさえ証明できれば、損害が生じたことも、その損害の範囲(つまりは損害金額)、債務不履行と損害との間の相当因果関係も立証が不要なのです。

ようするに、お客が利用規約に違反した、つまりは、盗撮したことさえ立証すれば、その盗撮で損害が生じたことも、生じた損害の金額、盗撮によって損害が生じたことの因果関係もなにも証明せずに、利用規約記載の違約金額を請求できるということになります。

では、もし、風俗の利用規約に違約金条項が入っていて、且つ、具体的な金額まで記載されていた場合は、この法律に従って素直に払わなくてはならないのでしょうか。

違約金の記載があったとしても払う必要はない

損害賠償額の予定(違約金)で決められた金額を払わなくてはならないのであれば、悪徳風俗はそれを悪用し、利用規約に莫大な金額を書き込んでくることでしょう。

しかし、法がそれを許すわけがなく、以下の二つの法律でお客は守られています。

消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)

1.次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

一  当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

民法90条(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

簡単に説明しますと、消費者契約法第9条第1項1号では、「消費者(客)と事業者の間に損害賠償の予定があっても、その額が、当該事業者に生じる平均的な損害額を超えている場合は、その超えた部分を無効にします」と述べています。

また、民法90条では、「社会の一般的秩序や一般的道徳観念に反する契約条項は無効です」と述べています。

これを風俗での盗撮トラブルにあてはめて考えると、先に解説した通り、そもそも盗撮行為と相当因果関係があるお店の損害は認められないわけですから、消費者契約法でいうところの平均的損害が存在しないことになります。さらに、お店の損害が認められない以上、社会秩序や一般的道徳観念に照らして、お客に賠償責任を負わせることは法の観点からして不当と言わざるを得ません。

さらに言えば、仮に利用規約に違約金の定めがあったとしても、単にホームページで掲載していたとか、壁に掲示していたとかだけでは、契約者であるお客に説明義務を果たしていたとは言えないでしょう。

よって、仮に風俗の利用規約に違約金の定めがあったとしても、風俗に損害賠償金を支払う必要はありません。

相場を越える賠償請求に対し警察への相談は有効か

さて、これまで、風俗に対しては損害賠償の支払義務がないこと、風俗嬢に対しては5万円~10万円の範囲内で損害賠償や慰謝料の支払をすれば良い事を解説してきました。

しかし現実には、数十万円から酷いケースだと100万円を超えるような要求をしてくることもあります。

このような、相場を越える請求に対して、警察に相談すれば解決できると考えている人もいるでしょうが、警察への相談は、単なる金銭トラブルにおいては意味を成しません。

もちろん、お金を払うまで帰さないと事務所に長時間閉じ込められたり、払わなければ家族にばらすと脅されたといったようなことがあれば、刑法上の監禁罪や恐喝罪を根拠に警察に被害届を出すこともできます。

そうではなくて単に慰謝料や損害賠償金の請求をされているだけであれば、警察への相談は意味がありません。例えば以下のようなケースでは、警察に被害届を出すことは難しいでしょう。

  • 風俗から口頭で「盗撮は規約違反となっていますので、損害賠償を請求します」と言われている
  • 損害賠償を請求され、「お金で解決できるなら」と支払いに合意したが実は納得がいかない

警察には「民事不介入」という原則があります。損害賠償金や慰謝料についての争いごとは民事事件の範疇になることから、基本的に警察では対応してもらえません。

慰謝料や損害賠償金を払うだけでは根本的な解決にならない

当弁護士事務所に相談に来られた人の多くが、悪質な風俗に一度は損害賠償や慰謝料という名目でお金を払ったのに解決に至らず、延々と請求が続いています。

盗撮をネタにお金をたかられると、一度の支払いで解決できることはまずありません。一度支払ってしまったら「もっとお金を引っ張れる」と思われて延々と被害が続くケースの方が多いのです。

風俗で盗撮がばれた場合、ほとんどが免許証や身分証明書などのコピーを取られていて個人情報が相手に把握されている状態です。これが元凶です。

携帯番号や身分証明書、本名などの身元を風俗や風俗嬢に知られていないならば、悪質な請求から逃れることは簡単です。しかし盗撮した時に携帯電話の番号や身分証明証のコピーを相手に知られていることがほとんどでしょう。

個人情報を知られたまま、また効果的な示談交渉などもしないままに、お金を払ってトラブルから解放されるということはありません。

相手からの不当な損害賠償や慰謝料の請求に関してあなたが何の不安もなく穏やかに暮らしていくためには、まずはその請求を止めることも大切ですが、握られている個人情報を悪用させない・永久に破棄させる交渉も必要になってきます。

こういった交渉を自分一人ですることは非常に難しいと言わざるを得ません。やはり法律・交渉のプロである弁護士を介入させた方が解決も早まりますし安全です。

当弁護士事務所では、「家族や職場に知られることなく、盗撮に関する風俗トラブルを迅速に、根本的に解決する」ことをモットーとしています。

これまで数多くの風俗トラブルを解決してきた実績もあります。
いつでも親身に誠実に対応いたしますので、どんなことでも構いません。困ったことがあればお気軽にご相談ください。